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2018/10/24 (水)

CdS露出計連動

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コニカ・オートS2が修理にやって来ました。オートS2は1964年に発売されたオートSの改良型でオートSシリーズの完成版と言っていいでしょう。改良前のオートSはその前年、1963年に発売された世界初のCdS式露出計連動カメラです。オートSに対してオートS2は露出計受光部がトップカバー右側からレンズ鏡筒に変更されたものです。

この受光部を鏡筒内にしたことにより、受光部の明るさ切替えレバーが無くなり、フィルム感度切り替えと受光部の明るさが連動できるようになりました。その後の他社のレンズシャッター式EEカメラも多くがこれと同じ方法を採用しています。回転盤にCdSの光量を絞る小さな穴がいくつか空いていて、その穴の大きさが変わっていくだけというだけで難しい機構ではありません。或いはサングラスのように色付きのフィルムが貼ってあるものもあります。

オーナーは浜松市内にお住いの方で、ご夫婦で来店されました。名古屋の中古店でジャンクで見つけられたとのことでした。子供の頃お父さんが持っていて、また使って見たくて手に入れたとことでした。奥様のお父さんもかなりの写真ファンだったようで、給料日になるとカメラ店の御用聞きがあった(笑 ということでした。もちろんご夫婦そろって写真好きで、同じ趣味ということがが羨ましく感じられます。このお客様から後日、50年近く眠っていた奥様のお父様が使っていたという引き伸ばし機をいただきました。

本機は巻き上げできない、露出計不動等の故障がありましたが、外観は大変綺麗でしした。ケースに入れられていたものと思われます。巻き上げできない理由は油ぎれでロック爪が解除しなかったため、また露出計不動は配線の腐食で通電不良のためでした。配線は鏡筒のCdSの部分からほとんどダメで、電池ボックス側を含めて全てをやり直すことになってしまいました。電池は現在購入できるアルカリ電池で代用し、その電圧に合わせて校正しました。

また、本機は機体正面に「EL」のロゴがあるので1966年4月以降のフィルム装填簡略化(コニリール・システム)を実装したものです。「EL」の意味はEasy Loadingの略とのことです。名前はすごいですが、フィルムスプールの差し込み溝を数多くしただけでです。カメラが大衆化し、フィルム装填ミスも多くなったための改良と言われています。今風にいうユーザーフレンドリーということでしょうか。

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2018/10/17 (水)

超レアなミノルタ一眼

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ミノルタSR-2の修理を承りました。このカメラはミノルタ初の一眼レフとして1958年に発売されたものです。SRの意味はSingle Lenz ReflexのSとRをとったものと言うことです。同時期発売のカメラとしてはSR-1がありますが、こちらは普及機の扱いで、シャッタースピードも1/500までです。以降17年間このSRシリーズは改良や新型が発表され、特にSR-T101は100万台以上を売り上げる大ヒットカメラとなりました。

さて、このカメラの画像を見て、珍しいと思われた方もいらっしゃるのではないかと思います。これはブラックペイントモデルなのです。2003年発行のエイ出版社「ミノルタカメラのすべて」にも記載があって引用いたします。

以下引用

「その数、日本国内で10台のみ。現在(2003年当時)、ミノルタ側にもこのブラックモデルを売ったり、修理したりした記録がなく、大手のカメラ店などへ献上品として、ごく少数のみ生産されたのではないかとみられている。」

引用以上

献上品という表現にやや苦笑しますが、その10台しか確認されていないうちの1台が当店に修理にやってきたわけです。万一を考えて、ちょっと店主も緊張致しました。

この個体は関西方面にお住まいのお客様から修理の依頼を受けたもので、お父様から譲られたもののようです。譲られた時にそのレアさも聞いていらっしゃったようですが、その時すでにレンズマウントがロックしない等の要修理品であったようです。使えないカメラで寝かしていても致し方ないといことで、今回当店での修理をご依頼いただきました。

レンズマウントのロック不良はロック爪部のネジ緩みが原因でした。爪もややへたっており、ちょっとだけガタがありますが、使用できる範囲内と判断いたしました。また他の調整整備も行なってオーナーの元へ戻って行きました。

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2018/10/10 (水)

EV値で合わせるカメラ

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ミノルタ・ハイマチック7Sの修理を承りました。今回もおじいさまが使っていらっしゃって遺品となっており、使ってみたいとのことで持ち込まれたのですが、革ケースが湿気を吸った結果、内側がボロボロになり、それがカメラ全体に張り付いて汚れ放題です。中にもフィルムが入ったままで、腐食しています。クリーニングの手間を考えるとちょっとためらいましたが、お引き受けしました。

ミノルタ・ハイマチック7Sは1966年に発売されたハイマチックの後継機種で、ハイマチック7との違いはアクセサリーシューにストロボの接点がついたぐらいです。ハイマチック7については以前ご紹介したことがありますので詳細を省きますが、シャッターはセイコーFLAを採用し、絞りオート、シャッターオートの2種類のオート機構があります。また、その両方をオートとすることもできます。つまりプログラムAEということです。先日のコパル・マジックシャッターと同じような考え方ですが、そこまで構造が複雑でもなくプログラムAEを達成しています。AEの範囲は(1/15,F1.7〜1/250,F22)となっているようです。

この個体の整備・修理は、やはりクリーニングに相当の時間をかけてしまいました。オーナーは20代の女性で使い方も含めて修理を承っています。浜松市内の方なので当店に引き取りに来ていただく際に使い方をご説明しました。ファインダー内のメーターの数字はEV表示です。オートの時はメーターの針が数字のあるところで撮ればそれで問題はないのですが、絞り、シャッタースピードのどちらかか、フルマニュアルの場合はメーターの数字を絞りリングの端にあるEV値の窓に出るように合わせます。

EV値と言うのはLV0で撮影してISO100のフィルムが適正露出になる明るさをEV0と定義しています。LV0はシャッタースピード1秒、絞り値F1.0の時の光の量を表し、光の量を示すLV値という単位の基準です。ISO100のフィルムを使う場合はEV値とLV値は同じですが、ISO400のフィルムを使うとシャッタースピードか絞りで2段変わりますので、値も2段変わります。光の量は1段絞ると半分になり、1段早いスピードだと半分になります。半分の半分は1/4ですから、ISO400のフィルムを使った場合はシャッタースピードと絞りを各一段づつか、シャッタースピード2段、あるいは絞り2段変えなければ適正露出にはなりません。ISO100でのEV12は、ISO400ではEV14となります。

あー、ややこしい。



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2018/10/3 (水)

ファックスでお見積り

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電話でカメラ修理のお問合わせをいただきました。カメラは50年以上前に買ったもので、当店より車で1時間ほどの掛川市より来店したいとのこと。また近所の電気店で修理ができないか尋ねたところ、当店の電話番号だけを教えてもらったということでした。電気店に修理の依頼に行くと言うのも変ですが、考えてみればカメラ店というのは最近ほとんどなく、カメラは家電量販店で売っています。時代ですね。

親切な電気店さんはネットで当店を探し当てて紹介されたのではないかと思います。お客様はネット環境はないので、ファックスで住所を送ってくれとのことでした。住所と概略見積りはファックスで送り、カメラも宅配便で送ってもらうことといたしました。

送られてきたカメラは1962年に発売されたフジカ・オートMで、元箱入り、取説や製品保証書、当時の値札まで入っていました。このカメラはコパル社のコパルマジックというシャッターが採用されており、シャッターの分解修理は大変難しいものです。通常のいわゆるEEカメラはシャッタースピードを選ぶとそれに最適な露出になるように絞りが自動で調整されます。それでも露出不足になる時には露出計の針がレッドゾーンに入ったり、あるいはシャッターが切れないようにロックがかかる等の仕組みがあります。

このコパル・マジックシャッターは例えば絞り開放でも露出が適正にならない場合は、シャッタースピードも変化し、例えば1/125が1/60になる仕組みです。それを全て機械的なカラクリで達成しています。電気的なものはセレン光電池でメーターを振らせるという部分のみです。取説にも「シャッタースピード1/125、絞りオートにしておけば、あとはカメラに任せればいい」と言った、カメラの操作をあまり考えさせない説明がされていました。

この個体の故障の原因はシャッターの粘りでした。複雑なギア機構のマジックシャッターの分解は一歩間違えれば再調整は至難の技となってしまいます。修理の履歴もありましたが、他のカメラ機能はほどんど問題ない様でしたので、シャッターを分解せずに溶剤でシャッター羽根の油分を拭き取る方法といたしました。もちろんこれも慎重にやらないければいけない作業です。大概シャッターチャージされて、戻る(切れる)時に動かなくなっていますから、羽根清掃中に突然動き出します。

シャッター羽根の粘りが取れると快調にシャッターが切れ、露出も適正です。お客様にはファックスで完成報告をして、代引き宅配便で返送させていただきました。実はファックスのお客様は初めてでした。

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