店主の日記/2016-11-14
フィルムの販促に貢献した大衆機
当店のレピーター様からご依頼のカメラです。
コダックレチナはドイツコダックの製造した35mmの大衆機で1934年に誕生し、その後1969年の製造終焉までの35年間に34機種が発売されています。
このレチナ1a型は1951~1954年の間に製造・販売されたものです。シャッターの仕様により前期型と後期型に分けられ、前期型はコンパ―ラピッドを使用、後期型はシンクロコンパ―を使用しています。但し、前期型の製造は少なく、販売のその年には後期型のシャッターに変更となっています。
更にレンズのバリエーションがあり、前期型には
1)シュナイダー・クセナー 50mm,F3.5
2)ローデンシュトック・ヘリゴン 50mm,F3.5
3)コダック・エクター 50mm,F3.5
4)シュナイダー・クセナー 50mm,F2.8
の4種類があり、後期型では2)のレンズがバリエーションから外れているようです。
この個体はシンクロコンパ―のシャッターですので後期型で、1)のシュナイダーのレンズをつけています。
今回は巻上げができないとのことでお預かりし、各部点検修理をさせていただきました。急に巻上げできなくなったとのことでしたので、まずカウンターを確認しました。このレチナはカウンターが減算式で「36」に合わせます。そしてカウンターが「1」になるとロックが掛かり、巻上げが出来なくなります。巻上げできない原因はやはりカウンターが「1」のときに掛かるロックでした。ただしカウンターの部品が壊れ、カウントしていないのです。カウンターの部品は良く壊れる(折れる)ようで、修理は折れた部分を他の金属を切ったもので半田継ぎをして直します。小さい部品なので半田継ぎも難しいです。
その他、シャッタースロー不調のため分解清掃、ファインダー・レンズ分解清掃と各部点検修理を行いました。
さて、なぜ「1」の時にロックが掛かるかというと、パトローネのスプールからフィルムの粘着テープが剥がれて巻き戻せなくなるのを事前に防ぐ意味で、残りの一枚は気を付けて巻上げるためのサインとなっているようです。カウンターを更に「0」の位置方向に1コマ分回せば最後の一枚が巻上げられ撮影ができます。この当時ならではの機能のようです。
ちなみにこのパトローネと言われている35mmフィルムのケースはこのカメラのために開発されたもので、それまでは暗室で長尺のリールから切り出していたフィルムを外で交換できるようにし、またレチナも大衆機として開発し、フィルム販売を拡大したコダックのアイディアです。その後、ライカやコンタックスもこのパトローネ入りフィルムに追従しました。
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